コンセプトが人を育てる──虎屋が教える100年企業の真実

世界で100年続く企業は数多くある。そのうちの約半分が日本にあるという事実を、お前は知ってるか?

順位割合
1位日本50.1%
2位アメリカ29.5%
3位ドイツ7.1%
[ 出典 ]世界の長寿企業ランキング|周年事業ラボ

日本はすごい。
長く愛されるビジネスを築く力がある国なんだ。

その中でも異彩を放つのが、株式会社虎屋だ。
創業は1501年ごろ。ざっくり言えば、織田信長も徳川家康も、ここの羊羹を食ったかもしれねぇレベルの老舗だ。

  • 創業:室町時代後期(約500年)
  • 年商:196億8,700万円(2024年3月)

言っておくが「昔からある」だけじゃ生き残れねぇ。
虎屋は、長く続くべくして、長く続いている。

その理由は、たった一つの「イズム」を、組織全体に染み込ませてきたからだ。

イズムとして語り継がれた虎屋のコンセプト

虎屋には、500年変わらずに掲げてきた、たった一つの言葉がある。

「おいしい和菓子を、喜んで召し上がっていただく」

たったそれだけ?…と思うよな。

だが、この一文こそが虎屋の原点であり、今も会社全体を動かしている判断基準だ。

ただ理念を掲げて終わり、なんてことはない。

虎屋もまた、その言葉を、商品・接客・空間づくり、そして人材育成にまで浸透させてきた。

教え込まない、気づかせる。虎屋の社員教育

1992年、虎屋は「Egg21」という自己啓発支援制度をスタートさせたんだ。

目的は明確。
「理念を語る」のではなく、「理念を体得する」社員を育てること。

Egg21では、社員同士が世代や部署を超えて語り合う場がある。そこでは、「自分にとっての ”喜んで召し上がっていただく” とは何か?」を考える。

正解を教えない。
マニュアルにしない。

虎屋がやっているのは、理念の内面化だ。それができる社員は、接客でも商品開発でも、自然と虎屋らしさを出せるようになる。

つまり、 ”コンセプトを再現できる人材” を育てているってわけだ。

経営者もまた、「翻訳者」である

虎屋の歴代社長たちも、同じイズムの上に立っている。その中でも大きな転換点となったのが、17代当主・黒川光博氏だ。

彼はこう言い切った。
「喜んで召し上がっていただく、という理念を、今の時代に合った形で表現する」

その言葉通り、2003年に「TORAYA CAFÉ」を立ち上げ、若者や海外の客層にも届くかたちで、虎屋の菓子を再構成した。

TORAYA CAFÉ とは

2003年に始めたTORAYA CAFÉは、「和菓子を現代のライフスタイルに届ける」という挑戦だった。「喜んで召し上がっていただく」という理念を、いまの客の暮らしや感性に合わせて再解釈した結果、あんペーストとか、羊羹をバターで挟んだサンドとか、これまでの虎屋にはなかったラインナップが生まれた。

伝統の芯は守りながらも、届け方は今の時代に合わせて変える。経営者の役割とはつまり、理念を守るだけではない。

その本質を損なわずに、新たな文脈で伝え直す「翻訳者」であることさ。

「理念を再現できる人」がブランドをつくる

虎屋が証明したのはこれだ。

ブランドとは、理念を掲げることじゃない。理念を、社員一人ひとりが体現し続ける仕組みだ。

どれだけいい言葉を作っても、掲げただけじゃ届かない。社員が、その言葉を判断基準として使えるようにすること。それができたとき、初めてブランドは生きる。

虎屋は、それを500年かけて証明してきたんだ。

お前の会社は、どうだ?
理念をポスターにしてないか?言葉だけで、実行者を育てる仕組みはあるか?

ブランドは、語るものじゃなく、育てるものだ。

理念を生きる人を増やせるか?
その問いが、企業の未来を決める。

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